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      急増する動画コミュニケーション。 コロナを契機に、メディアの在り方はどう変わる?

      新型コロナウイルスによる外出自粛や休校を受け、私たちの多くがこれまで以上にインターネットを利用し、動画配信などを楽しむようになっています。この変化は、今後のメディアやコンテンツの在り方にどのような変化をもたらすのでしょうか。今回の特別対談では、2007年から電通と共同で生活者の情報行動を研究してきた橋元良明氏(東京大学名誉教授、東京女子大学現代教養学部教授)をお迎えし、最新の調査データを踏まえながら今後の動きを探ります。企業のマーケティング・事業開発担当者はもちろん、メディアコンテンツの関係者もぜひ一読を!

      PROFILE

       
       

      在宅時間の増加にともない、普段観ないドラマを“イッキ観”

      橋元:我々の研究グループでは今年の3月にメディアに関する調査を行っていたのですが、その直後に緊急事態宣言が発令されました。そこで4月半ば、緊急事態宣言発令前後で人々のメディア行動にどのような変化が出ているか、同じ方を対象に再び調査を実施したのです。その結果、全体(15才~69才)でテレビ視聴時間やインターネット利用時間、ゲーム利用時間が軒並み増加。とくに10代における増加が著しかった。子どもはつねに時間があるように思われがちですが、普段は学校や塾で意外と自由時間がありません。その学校が休みになり、暇でしょうがなかったんですね。一般的に娯楽行動は在宅自由時間に規定されるので、予想通りと言いますか、ある意味、当たり前の結果でしょう。

      長尾:在宅自由時間でいうと、これまで移動などによって分断されていた自由時間が「連続した時間」になったことも大きな変化だと感じます。実は私もリモートワークになったことを機に、以前から知人に薦められていた邦画連作を初めて観たのですが、全シリーズをいわゆる“イッキ観”したんです。こうした機会じゃないと観なかったジャンルの作品ですし、また、イッキ観することもできなかったと思います。

      橋元:私もこの機に全シリーズ再視聴した作品がありました。先ほどの調査でも、動画配信サービスに新たに加入したり、これまであまり見なかったユーチューバーのチャンネルを見たりと、新たなコンテンツの面白さに気づいた人が多く見られました。これは今後の情報行動にも影響を与えると予想できます。

      長尾:これだけ動画の視聴時間が増えているということは、一方で削られている時間もあるのでしょうか?

      橋元:一つはやはり読書ですね。ただ、これはコロナをきっかけにということではなく、近年若い人たちが文字によるコミュニケーションそのものから離れている傾向があります。少し前なら携帯でメールを送りあっていた若者も、今はほとんどがLINE。それも絵文字やスタンプが多く使われます。彼らにとって、文字は書くのも読むのもメンドクサイもの。若年層の利用率が増えているSNSやアプリも、InstagramやTikTokなどビジュアル中心のものばかりです。

      長尾:つまり動画に慣れてしまうと、文字を読まなくなると。

      橋元:ええ、こんな仕事をしている私ですら読書時間が減っていますからね(笑)。でもこれも考えてみれば当然で、そもそもヒトは視覚優位の生き物なんです。起きてから寝るまでずっと映像を見て生きている。情報処理の割合では視覚が圧倒的で、聴覚でさえ5%前後と言われています。文字が誕生したのは紀元前3500年頃のことですが、文字は音を視覚的に表しただけのもの。目で読むとはいえ、映像に比べたら人間の本性に合わない記号列です。ヴィジュアルコミュニケーションが増えているのは、ヒト本来の知覚スタイルに戻っていることだと言えるかもしれません。

      今でもテレビはメディアの横綱?

      長尾:映像メディアや動画コンテンツとの接触率が増える一方、ここしばらくは若者のテレビ離れも叫ばれています。

      橋元:そうですね。純粋にテレビとインターネットの利用時間だけを比較すると、2012年を境に10代の利用時間が逆転しています(ネット108.9分、テレビ102. 9分)(※1)。スマートフォンの利用率もどんどん増え、今や10代で90.8%、20代で99%がスマホを持っている時代(※2)。それに伴い、テレビとインターネットの利用時間の差も拡大するばかりです。
      ※1:総務省 「平成24年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
      ※2:総務省『平成30年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』

      長尾:私たちのクライアントである企業様や放送局様もこうした流れを非常に気にされていて、テレビ離れとは言われているけれど実際のところどうなのか、若者の情報行動を正しく把握したいというニーズがずっとありました。それが今回、橋元先生との共同研究をベースに電通が『子どもメディアレポート』をまとめるに至った背景の一つでもありましたが、実際にファクトデータとして調べてみると、意外と子どもたちはテレビに保守的で……

      橋元:本当に意外な結果でしたね。時間帯別のメディア利用(テレビとスマホの比率分析)を見ると、19時台から20時台にかけて中学生は50%以上をテレビに充てていて、依然、夕食時はテレビが優勢であることが確認できました。さらに視聴時間の長短からテレビ派/スマホ派を分けた場合、中学1年生の50%、中学全体女子の45%が「テレビ派」であり、これも意外とテレビが健闘しています。オンデマンド視聴や動画配信など「好きなものを好きな時に観られること」が好まれると思いきや、意外とリアルタイムのテレビが好きなんですね。

      長尾:「テレビを観ながらスマホを使う」「ネット動画について、友人や知人とネット上で会話する」「テレビ番組について、それを観ながら友人や知人とネット上で会話する」などの“ながら視聴”や“ソーシャル視聴”も増えています。

      橋元:そうですね。SNSで騒がれる話題も、もとはテレビから来ている、なんてことも多くあります。テレビにはやはり圧倒的な影響力があって、例えば今回のコロナ禍で起こったトイレットペーパー騒動もそう。品薄のニュースを最初に知ったメディアはどれだったかという調査では、半数近くの人がテレビと回答し、これはSNSを大きく上回ります(※)。視聴時間自体はインターネットに負けているけれど、世の動きを知る、そして信頼性という点で、やはりテレビは絶対的な横綱のようなものです。私の弟子でテレビを持っていなかった若い研究者も、ネットニュースは内容がころころ変わり出典もよくわからないものが多いため、コロナを機にテレビを買いましたと話していましたね。
      ※出典:株式会社サーベイリサーチセンター「【緊急調査】新型コロナウイルス感染症に関する国民アンケート」(調査期間:2020年3月6日~9日)

      長尾:私どものような広告業にとっても、テレビの影響力はやはり今でも不変です。広告は同じものを何度も繰り返し見てもらうことで浸透していきますが、そのリーチ率やスピードはやはりテレビCMが一番。メディアや世の中のトレンドはどうしても「変化」に注目しがちですが、案外変わらないものも多いんですよね。

      コンテンツにこそ批判的に。内容次第でオーディエンスは取り戻せる!

      橋元:私個人的には、テレビの視聴時間よりもコンテンツのほうに注目しています。最近は不倫騒動や目立った芸能ニュースが起こると、どの放送局も朝から晩までそればかり。本当にそんなに重要か? と疑問に思うことがあります。メインとなる視聴者の興味・関心に応えることは大切ですが、ターゲット以外の視聴者層が離れてしまうのも当然です。先ほど話したようにテレビは影響力も非常に大きいので、視聴者としては本当にそれが日本の最大の関心事になるべきことなのか、批判的に捉える目も必要でしょう。

      長尾:コンテンツに幅を持たせるという点で、いまジャストアイデアとして思い浮かんだのですが、今の子どもたちに『巨人の星』や『アタックNO.1』など昔のアニメを観てもらうのも面白いですね。連続した在宅時間があることを活かし、『白い巨塔』や『東京ラブストーリー』などの名作ドラマを新旧で一気に見比べするとか。優れたコンテンツを活かし、これから制作者の方たちも新しい施策を仕掛けてくるのではないかと期待しています。

      橋元:テレビからは少しそれますが、コンテンツの幅で言えば新聞というメディアはすごいですよね。コロナの影響で暇な時間が増えたため、新聞を毎日隅々まで読んでいるという人が多いんです。そうすると、政治から経済、健康、生活情報まであらゆるジャンルが幅広く網羅されていて、総合提供メディアとしての新聞の素晴らしさに改めて気づくという

      長尾:これだけ読めば世の中の空気がわかり、しかもすでにダウンロードされてプリントアウトまでされている。そう考えるとすごい価値ですよね。最近は電子書籍を読むことも増えましたが、やはり紙のほうが記憶に残る気がします。分厚い物質としての感触や、あそこに折り目を付けたな、付箋を貼ったなという行為も含めて記憶している気がして。電子にももちろんメリットはたくさんありますが、どうも記憶の中でさらさらと落ちていく砂のような感じがして……

      橋元:おっしゃる通り、実際に心理学の実験では、電子より紙で見せたほうが記憶に残るという結果が出ています。その理由とされる仮説のひとつに「グーグル効果」というものがあって、電子的に保存されているよと言われると人はその情報を記憶しなくなるのです。また、何かを読むときは位置情報も同時に記憶するので、情報が紙に固定された新聞や書籍は頭に残りやすい。一方、流動性のあるネット媒体だと定着しづらいという理由も考えられます。
      そう考えると、テレビだけでなく新聞も、改めてメディアとしての価値が見直されるかもしれませんね。情報の信頼性という点でもテレビ同様に高いですから。

      メディアによる分断ではなく、教えあえるやさしい社会へ

      長尾:映像メディアということでもう一つ。インターネット会議やネット飲み会などが一気に増えましたが、先生も使われていますか?

      橋元:ええ、やりましたよ。この春から職場が変わりましたので懇親会を開いていただいたのですが、こんなご時世ですからZOOM飲み会で。何度か体験しましたが、しゃべる人が画面にどーんとクローズアップされて、あれは疲れますね。

      長尾:実は私も、自分が飲んでいる姿が相手の大画面に映っていると思うとどうも酔えないんです(笑)。

      橋元:対面との大きな違いは、相手の顔が目の前の大画面に映し出されることによって、パーソナルスペース(個体空間)が侵されている気分になること。好きな相手ならともかく、苦手な上司だと心理的に疲れてしまいますよ。一方で、カメラに映らない手元では何をしていても自由なので、退屈な会議などはこの先もずっと遠隔でいいかもしれません(笑)。

      長尾:苦手だからと言って新しいメディアやテクノロジーをすべて避け続けるわけにはいきませんから、どう付き合っていくかは大きな課題ですね。先生と電通とで続けてきた研究では、10代の頃からケータイの通信環境が当たり前にあった世代(特に1986年頃生まれのハチロク世代以降)を「ネオ・デジタルネイティブ」と定義してきましたが、今はそこからさらに進んだ「ポスト・デジタルネイティブ」も登場しています。こうした世代のメディア行動実態も、今後私どもでしっかり調査していきたいテーマです。

      橋元:私もこのコロナ禍、大学での対応において若い先生方とのデジタル感覚の差を痛感します。授業を撮影してアップしろと言われても、私のような年代の先生はもう四苦八苦。ついこの間まではメールすら打ったことがなかった人がまだいる世代ですからね。ところが若い先生は、あっという間に「YouTubeにアップしたので見てください」と適応している。時代は流れていると思いましたねぇ。

      こうしたデジタルやメディアの変化に、今の若い人たちは本能的について行くことができます。だからぜひ、その感覚や知識を活かして、どうやって高齢者をサポートしていくか考えていただきたい。若い人に質問して「そんなこともわからないの?」と馬鹿にされると、本当に涙が出ますよ(笑)。特にインターネットは異質性を認めない閉鎖的な空気がありますが、こういう人たちもいるんだと思って教えていただければ、もう少しやさしい社会になっていくのではないでしょうか。

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