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      コロナ時代のEC未来予想! ~スローな日本もいよいよ転換期?~

      コロナ以前から、年々成長を続けてきたグローバルのEコマース市場。外出自粛やロックダウンによる影響を受け、その成長はさらなる加速とターニングポイントを迎えています。一方で、2019年における日本のEコマース市場の成長率はわずか4%。世界全体の成長率が20%であるのに対し、スローな現状は否めません(※)。コロナを機に、日本の企業やブランドにはどういった転換が必要なのでしょう? グローバルのEコマース事情に詳しいiProspectのネイト・シュリラ氏とDentsu Commerce Roomの山内が、コロナ禍の事例やデータをもとにEコマースのこれからを予想します!
      ※出典:eMarketer® “Global Ecommerce 2019” (2019年6月)

      PROFILE

       
       

      コロナ禍の取り組みは各社さまざま。二人の注目は?

      ネイト:コロナはいきなりやってきて急速に広がったので、突然のことに上手く対応できた企業はあまり多くありませんでした。とはいえ、そうした中でも注目したい事例がいくつかあります。

      一つはHiltonグループ。ホテルはもうどうすることもできない状況だったけれど、サービスを利用できない既存顧客のためにメンバーシップの失効期限延期や会員ステータスの維持、ポイント有効期限の保留などを決めました。日本だと私がよく利用する航空会社も同様で、運休・減便で搭乗機会が減っても会員ステータスが変わらないようになっています。新しいことができない分、既存の顧客を大切にしようという対応ですね。

      小売りではオーストラリアのWoolworthsというスーパーが、自由に買い物に行けない人のために数日分の食材や日用品を詰め込んだ「Basic Box」を販売しました。彼らの売り上げを維持する目的もありますが、それ以上に “困っている人のためになった” ということの意義が大きいです。コロナが収束したあとも、「あの時こんないいことしてくれたよね、またここで買おう」と思ってもらえますから。

      山内:社会貢献的な取り組みを行う企業は、日本でもいくつか事例が見られました。ウェブ会議用のバーチャル背景をいち早く配布したり、豪華タレントや著名人も参加したWEB動画を配信したり。直接の売り上げにつなげるというより、大変な時期にオーディエンスを元気づけようというブランディングに近いプロモーションが多かった印象です。また、不足した物資の供給に対応したメーカーもありました。既存のコンセプトや枠組みにコロナ対応が上手くはまったブランドは動きが早かったですね。

      ネイト:一方で、苦戦したのがラグジュアリーブランド。この業界では売り上げの一定割合を日本のリテールに頼ってきたので、営業自粛による影響も大きかったようです。Eコマースにも積極的ではなかったので、私たちのもとにも「もっと早くやればよかった、今からどうすれば?」という相談が来ていますね。アメリカでは、ラグジュアリーブランドがついにAmazonでの販売を始めるという動きも出ているほど。

      山内:これまではないだろうと思われていたプラットフォームやソリューションの活用が、今回のコロナショックによって現実的になってきた感じはありますよね。そう考えると、今後はただオンラインで売るだけじゃない、Eコマースの新しいスタイルが増えていくと予想できます。

      オンライン・オフラインが融合した、新たなコマース様式が登場

      ネイト:コロナ禍におけるEコマースの具体的な変化についてはマイクロソフトが行った海外のリサーチデータに興味深いものがあって、2020年の1月と3月でBOPISの検索が1200%ほど増えたんです(※)。BOPISという可愛らしい名前はBuy Online Pickup In Storesの略で、ネットで在庫を確認してカートに入れ、車でお店まで取りに行く方法のこと。車社会のアメリカでは最近増えていて、私の母もよく利用しています。※出典:Microsoft “How COVID-19 is affecting in-store pickup interest” (2019年3月発表)

      そしてもう一つ増えているのがinstacart。これは日本で言う買い物代行やUber Eatsのようなもので、アプリからスーパーの商品をオーダーすると、配達員がお店で買い物をして自宅まで届けてくれるサービスです。単純にEコマースの割合が増えているだけでなく、買い物の仕方そのものがオンラインとリテールを跨ぐようになってきているのが興味深いですね。

      山内:オン・オフが融合せざるを得なくなっている状況は、日本もまったく同じです。顕著なのが不動産や住宅など、モデルルームを中心に営業販売を行っていた業界。現場で内覧できないからと言って営業を停止するわけにはいかないので、オンラインで家づくりの相談をおこなったりVRで商品を見てもらったりするサービスが増えました。もちろん業界すべてが一気にシフトしたわけではなく、いち早くオンライン営業に対応したハウスメーカーとしばらく様子を伺うスタンスの多かったマンション業界など、一つの分かれ目ができているようにも見えます。こうした新しいコマース体験は、みんなが便利さを理解すればコロナ後もやめる必要はないので、今後も必要に応じて使い分けるような動きが出てくるのかなと思います。

      ネイト:先ほどのマイクロソフトの調査でも、この期間に初めてEコマースを利用した人に「今後も使い続けますか」と聞いたところ、約8割が肯定的な解答をしています。そうなるとコロナ以降で重要になるのは、オンラインとオフラインそれぞれの強みは何かという点を改めて見極めていくこと。これまでは店舗で買うメリットのひとつに「すぐ手に入る」がありましたが、Uber Eatsもinstacartも数十分あれば届いてしまうのでもうスピードは強みになりません。そうすると次にエクスペリエンス、ぶらぶらと歩きながら気になるものを手に取るという「体験」が残りますが、これも中国で爆発的に人気を集めるShopShopsなどのライブコマース(動画配信を通じてリアルタイムで買い物体験ができるEコマース手法)が台頭してきています。

      山内:ライブコマースは日本の企業も新しいソリューションとして関心を示し始めていますね。インフルエンサーやショップ店員が買い物の様子をライブ配信し、視聴者はリアルタイムで質問やリクエストを送りながら、まるで自分がその場でショッピングをしているような気分で実際に商品を購入できる。中国では1時間で何千万も売り上げる人がたくさんいて、何兆円という単位の市場規模になっています。日本人は新しいソリューションやテクノロジーをすぐには受け入れにくい国民性があるように思いますが、店舗が十分に機能できない状況下で中国の事例などを知り、ようやく最新ソリューションに積極的になってきたのではないかと感じています。

      ネイト:たしかに海外から見ると日本は未来的なイメージなのに、実際に来てみると今でもFAXを使っていたりハンコ問題があったりと、IT化に遅れている部分を多く感じます。2年前に読んだある記事で、日本のIT投資増加率がアメリカの30分の1程度だと知ってびっくりしたのを覚えていますよ。それが日本のEコマースの現状にも表れているのかもしれませんね。

      これからのECを考えることは、コマースの基本に立ち返ること

      山内:海外の最新事例に目を向け始めたことは良い傾向ですが、でもそれをそのまま取り入れれば必ず成功するわけじゃない。これからの日本には、まずその課題があると思います。グローバル視点から各国のEコマースを見ているネイトさんは、そのあたりをどう考えますか?

      ネイト:単純にマネするだけじゃダメというのはその通りで、まずコマースはプラットフォームの違いに大きく左右されます。中国にはアリババをはじめ巨大なプラットフォームがあるので、人も集まるし動く金額も大きい。そのインパクトに熱狂する気持ちは分かりますが、そこでの成功事例を日本に持ってこようにもまず「場」がありませんよね。仮にプラットフォームがあったとしても、そこに頼りすぎると今度は企業や商品のブランド性が弱くなってしまいます。

      山内:プラットフォームは集客力があるから、最初のきっかけとして利用するのは決して悪いことではない。でもそれだけでは、「誰にでも通用する商品」しか残らないということですよね。企業やブランドが自分たちの顧客をきちんと見極め、「誰にでも」でなく「その人のための商品」を提供していかなければブランドとして勝ち残れない、と。

      ネイト:そのための答えはシンプルで、大切なのはコンシューマー視点に立ち返ること。日本の顧客は何に困って、何を求めているのか。ブランドや商品と顧客をどうすればつなげるのかという、コマースの根本を考える作業が必要です。まずはAmazonから売り始めたとしても、そこでファンになってくれたお客さんと今度はどうダイレクトなつながりをつくっていくか。例えば先ほど話題に出たライブコマースなら、直接会話ができ距離を縮められます。それぞれのプラットフォームやソリューションのバリューを理解し、うまく利用して長期的なコマース戦略へとつなげていけばいいのです。

      山内:今「戦略」という言葉が出ましたが、ネイトさんが開発した「コマース・サクセス・フレームワーク(CSF)」などを活用するのも、全体を俯瞰してEコマースの戦略を考えていく際に有効ですよね。

      ネイト:そうですね。CSFはコマースの取り組みレベルや課題を評価するフレームワークとして2年前に開発したもので、コマースの基本といえる「Availability/Findability/Buyability/Repeatability」の4つの視点から企業のコマースの実力を検証する手法です。コマースの根本心理とは? を考えながら作り上げたものなので、国や業界を問わず使える指標になると思います。

      俯瞰視点を掴めば、眠った日本のEコマースが動き出す?!

      山内:ネイトさんが指摘する通り、オンラインとオフラインの融合が進むことで、日本の企業には俯瞰的なコマース戦略がますます必要になることは確かでしょう。そしてそれは意外と、多くの日本企業が苦手とするところでもあります。専門性を重視してきたため組織が縦割りで横の連携が取れていなかったり、結果から物事を振り返ることは得意でも「まず全体を俯瞰して分析から始める」という文化に馴染んでいなかったり……。要因はさまざまですが、CSFなどのお話をして興味は示して頂けても、まだ自分たちはそのフェーズじゃない、統合して考えるにはまだ早いと自分ごと化されていない場合がよくあります。

      ネイト:それも本当に国民性で、部分的な仕事をすることを得意としている分、みんなが自分の仕事に集中しすぎて全体を俯瞰することが苦手になっているのかもしれませんね。逆に海外は目立ちたがり屋で新しく大きなことしかやらないって人ばかりで、それはそれで悪い面もあるけれど(笑)。いずれにせよ全体を見ないでランダムにやれば結果もランダムになってしまうし、パフォーマンスも偏ってしまいます

      山内:ただコロナによる想定外の困難に立たされたことで、確実に意識が変わっているなという実感もあるんです。だから本当に、これからが企業にとっての転換のポイントだな、と。

      ネイト:日本のEコマースの未来には私も期待を持っています。もともと私は東北のボランティアをきっかけに来日したのですが、大変なときもみんなが一緒になって頑張る日本の精神や、時代を先読みして新しいものを生み出してきた歴史などは、日本の素敵な力だなあと思いました。だけど今は、そうした力を活かしきれずに眠っているというか……。イノベーションの観点から見ると、平和にハンモックでお昼寝しているように見えるんです。その一方で、目の前の仕事をこなすことに一生懸命になりすぎて疲れ切っている現実もある。矛盾していますよね。だからエネルギーを上手く解放して新たな方向に向かせられたら、日本のコマースはより活発になっていくと思います。

      山内:今はスローでも、可能性はまだまだこれから! Eコマースにしっかり向き合うための共通意識が高まりつつある今、私たちもクライアントと一緒になって、新しい方向へ走っていきたいと思います。

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